T*って何?

 
 

 一般的に、レンズはその構成が複雑になればなるほど、レンズの空気界面における反射の為、画像のコントラストが低下するものとされている。界面数が増えれば、それに応じて内面反射の数も比例して増加する。内面反射が多い程、コントラストを損なうフレアーはもとより、画像内の像に重なるゴーストができる可能性も高くなる。空気界面における反射を防ぐ為のコーティング技術の開発は光学技術の重要課題である。
 カール・ツァイスでは長年の研究成果として1935年に独自の反射防止処理技術を開発し、実用に大きく前進した。これは低屈折率フッ化物質を真空蒸着して薄膜を形成する処理法を確率した。さらに1939年には世界最初の2層膜コーティングを作り出し、1943年には3層コートを完成するに至った。
 その後、さらに多層膜コーティング技術が開発され、顕微鏡の対物レンズとして商品化された。カール・ツァイスが写真レンズ用に多層膜反射防止コーティングを本格的に施したのは1972年のことである。これを機に1935年から採用された、従来のコーティングをつけたツァイスレンズが赤色の「」マークで識別されていたが、多層膜を施した新しい規格として、「」マークに「」を付けて「Tスター」の称号を与えることとなった。「」の意味は「進化する」という意味と、数々のレンズが「星のように輝いて欲しい」という願いが込められている。T*コーティングの優れた反射防止効果は、どのようなメリットがあるか考えてみよう。
 レンズ内での乱反射は解像度は勿論のこと、色の再現性を損なう原因となる。T*コーティングはそのような反射を極力抑え、優れた色再現を可能としている。色の濁りを100%除去はできないが、T*基準は3%以内に抑えるという高水準となっている。全てのレンズがT*基準に基づいているので、どのレンズを使っても等しい色再現性が一致する理論である。また、乱反射によるゴースト、フレアーを防ぐので、レンズの透過率が高く、モノクロ、カラー共に高コントラストの鮮明画像が得られる。国産レンズのT*コーティングに於いても、オーバーコッヘンの工場から移された機械と、その都度送られてくる蒸着物質を指定された方法でコーティングしている。

 ドイツの諺(ことわざ)でこんなものがある「星には真実がある」

T*コーティング装置

 

 

 

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