MTFって何?

 
 

 レンズメーカーが、しばしば直面する問題の一つとして、解像力に関する問い合わせがある。解像力がレンズの性能・品質の評価に欠くことのできない要素であると信じられている部分が大きい。しかし、ドイツのおける光学工業界では、画質評価を解像力の本数で表すことを避けている。
 解像力を測定する場合、肉眼によるテストなので検査員の目だけが基準であり、また通常の感光材による現像処理以外のものを用いることで、測定結果を人為的に左右することができる。そのため標準規格が定められない限り、実際の性能とかけ離れた水増し結果を得ることも充分可能である。
 カール・ツァイスはレンズ性能の評価基準としてMTF(Modulation Transfer Function)検査をいち早く導入した。MTFとは被写体のある部分の光を、画像の対応する位置にどれだけ集められるかを表す値である。レンズ性能を数値によって検査するもので、結像の良否とコントラストを同時に検査する画期的なもの。画面中心から周辺に至るまで、各絞り毎に検査される。カール・ツァイスのレンズは性能に絶対の自信があるせいか、早くからこのMTF値を公に発表していたが、最近になって国産メーカーもMTF値を公表する傾向になってきている。カール・ツァイスのMTF検査は抜き取り検査ではなく、一つ一つの全てのレンズにおいて綿密な科学分析が加えられるので、どの固体に対しても性能に対する信頼性は非常に高い。量産にあたり、全てのレンズにこの検査基準が適応されていなければ、全く意味が無いのである。
 レンズの価格は少々張るが、ユーザーの立場からすれば製品ムラが無く高い品質を確保できるし、手元に行き渡る各固体が綿密な検査をパスしていることを考えれば納得できる。新品で購入すれば、各レンズのシリアル毎に検査者のサイン入りの検査票が添付されている。これは良いレンズを提供する為の執念の結果であると言わざるを得ない。
 繰り返すが、解像力だけを取り上げるのは意味の無いことというのがツァイスの見解で、人の目で見たままの自然をレンズを通してどれだけ的確に再現できるかどうかにフォーカスを置いて設計されている。

 

 

 

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