ドイツ製と日本製の写りはどう違うの?

 

 レンズもワインと一緒で、気候風土の違う環境で作れば全く同じ条件という訳にはいかない。特に空気中の水蒸気含有率、つまり湿度が違えば、ガラス溶融中に自然と含まれてしまう水分にも差が出てくる。ヨ−ロッパに位置するドイツに比べ、アジア圏の日本は格段に湿度が高い。ここまで書くと、ドイツ製のほうが製造工程上有利に感じるが、判で押したような量産技術にはむしろ日本製に軍配がある。国産は確実性(平均値の確保)においてはかなり高水準であり、旧富岡光学といえば、言わずと知れた信頼ブランドである。ドイツ製は基準値内でのアタリハズレは日本製よりあると思ったほうがよい。ただ、MTF測定値が高い=いい作品が撮れる玉とは限らないのである。ドイツ製は何本か撮り比べてみないと、ホンモノには出会えない。個人の好みにもよるので、自分に合った納得の1本に巡り逢うまで、買っては手放してを繰り返すこだわり派も存在する。
 ほぼ同じ時期のドイツ製と日本製ならガラス材の含有物質は基本的に一緒だが、同じドイツ製でも年代によって若干ではあるが、硝材は変化していっている。製造番号捨て番58のAEレンズだと、コンタレックスのレンズと同じ硝材だとも言われている。もともとZEISSというのはドイツのブランドなので、日本製はライセンス生産になるわけだから、やっぱり本物はドイツ製なのである。また気分的にドイツ製であることへの自信からくる意欲により、国産よりいい作品が生まれる可能性がある。
 あとT*コーティングも微妙であるが、ドイツ製のほうが厚めにコーティングしているとでも言おうか、概ね国産より濃い目の紫色を呈している。やはりこれもドイツ製ならではのバラつきがあるので必ずしも当てはまるわけではないし、現実写りに大きな差を与えるものとは考えにくい。若い番号の広角レンズのコーティングは、紫ではなく緑が強い傾向がある。
 さて、これからドイツ製の悪い点を書かなくてはならない。最近製造されたものはともかく、15年以上前のものにはかなり差がある。これまで硝材のことを中心に書いたが、レンズの性能のファクターは実際に硝材だけではないのである。国産が最も有利なのは内面反射防止処理でる。内面反射とは光がレンズに入射後に内壁もしくはレンズ面などの影響で乱反射が起こり、ゴ−スト、フレア等を起こすことを言う。内面反射により、コントラストが下がり、著しく解像度を落とすことになる。

 結論としては晴天順光かつネガフィルムで撮影した場合、違いは全く無いと言い切っても過言ではない。しかし、ポジフィルムで曇天、逆行、少しアンダー目で露光したりと、ある特別な条件では、違いが見られる可能性がある。さて、あなたは安泰な国産派?それとも勝負師のドイツ派?


幻の西ドイツ製Planar T* 50mmF1.4

 

 

 

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