S-Planar:エス・プラナー

 

 S−Planarの”S”は”Special Purpose”の頭文字をとったものであり、”特殊用途”を意味する。”Planar”については別途Planarのページを参照されたし。
 実際に発売されたS−Planarは60mmと100mmの2本。共にマクロレンズであった。通常のプラナーと同様のレンズ構成で、前後対称型のその光学系は諸収差を良好に補正し、優れた解像力を誇った。90年代に入ると、”S−Planar”という名称は残念ながら淘汰され、至近撮影用としては理解しやすい名称である”Makro−Planar”にその性能が受け継がれている。”S−Planar”は全て旧西ドイツにて生産されていたが、現行販売品である”Makro−Planar”は国産である。発売されていたS−Planarを一本ずつ紹介しよう。
 まずS‐Planar T* 60mmF2.8は旧西ドイツ製。現在のMakro−Planarと光学系は全く一緒。ただ、レンズ後部からマウント面にかけての部材が現行品より手が込んでいるのが分かる。
 続いてS‐Planar T* 100mmF4も同じく旧西ドイツ製。@ヘリコイドが無い、A後玉が突出しているという理由からレンズ単体では使用できず、ベローズに装着の上で使用した。ベローズを使ってのアオリ撮影は、新たな撮影分野を築いたが、撮影準備や持ち運びが面倒という難点から開放されなかった為にあまり流通せず、とうとう1985年にはカタログ落ちしてしまった。当時の流通量の少なさが現在にそのまま反映され、まさに『幻のレンズ』である。1987年には同じ100mmでもF2.8の明るさを持つMakro−Planar T* 100mmF2.8が当初は旧西ドイツ製で発売された。単体で使え、しかも高性能なF2.8の出現で、F4はその役目を終えた。しかし、大きなイメージサークルを生かしたアオリ撮影の醍醐味は、なかなか捨て難いものがあるように思う。

左は60mm、右が100mmのS−Planar

 

左は60mm用の一般リアキャップ。右はS−Planar100mm専用のリアキャップ

 

S−Planar100mmの突出している後郡

 

実際にベローズを介してカメラを装着したS−Planar100mm

 



S−Planar60mmの初期ロットの後玉付近。内面反射を抑える為、3段繰り出しになっている

量産ロットと現行の日本製はコスト削減の為であろうか、1段のみとなっている


 

 

 

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