Makro-Sonnar:マクロ・ゾナー

 

 これは背徳の光学系とでも言おうか、レンズ優先のツァイスがNシステムのボディの為に新たに専用設計した新規光学系。Nシステム発売時にはマクロ・プラナーを採用することになっていたが、試作品のテストで実用性を満たさないという判断から、新規光学系を産むきっかけとなった。これを開発せざるを得なかった理由は、マクロ・プラナーの場合、前群を大きく繰り出してのフォーカシングとなるが、AFボディには実際負担が大きすぎてスムーズな動作を欠いてしまうからだ。キャノンの旧EF100マクロとインナーフォーカス(レンズの全長を変えずに、中玉を前後してピントを合わせる)搭載の新EF100mmマクロUSMで、フォーカシングの比較(最短と∞を繰り返す)をすれば、イメージが簡単に掴める。USM内蔵の有無以上に、前群繰り出しというのはボディに大きな負担がかかることがイメージできるであろう。
 まずマクロ・ゾナーの設計段階で”インナーフォーカス”でスムーズなAFによるフォーカシングが前提とされた。ゾナー系とはいえ、定番の前3枚+後ろに併せガラス2枚1組の計5枚構成のゾナーとは大きく異なる。180mmのオリンピアの系列でもなく、かといって645用の140mmとも違うし、どちらかというとバリオ・ゾナー28-70mm F3.5-4.5のテレ側にあるマクロモードの光学系をそのまま固定したような形に最も近いだろうか。書きたくはないが、キャノンのEF100mmF2.8USMにかなり類似した光学系である。キャノンに比べ、定価はおよそ倍であるが、ツァイスは色収差補正用の異常分散ガラスを3枚組み込むという贅沢な設計。フォーカス・リミッターにより、スムーズな至近撮影も可能。構成枚数は、ツァイスのマクロレンズとしては過去最多の12枚から成っている。

 


 

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